きぶなくんの市場のお魚雑学ブログ(魚以外もあるよ!)
トクビレの話
2023-03-17
異様な風貌ですが美味しい魚です。
宇都宮の市場では全国各地から様々な水産物が入荷されます。
中には変わった風貌の魚も多く、今回ご紹介する魚も非常に特徴的な見た目をしています。
『八角(はっかく)』です!
あれ…?タイトルと魚の名前違くない?…と思った方もいるかもしれません。
厳密にいうと正しい名前(標準和名)はトクビレという魚なのですが、この八角とは産地の一つでもある北海道の呼び名で、専ら宇都宮市場でもこのトクビレの事を八角と呼んで扱っています。
ではなぜ『八角』という名前なのか…。
実はこの魚の胴部を輪切りにすると、断面がキレイな八角形になっており、この事が八角という名前の由来になっております。特徴はそれだけではなく、堅い骨板に覆われた体はトゲだらけで、シュッと長い頭部の下にはヒゲもたくさん生えています。
中でも特筆すべきは和名トクビレの名前の由来となった大きなヒレです!
この大きなヒレは雄のトクビレにしか見られず、雌のヒレはそこまで大きくはありません。つまり、トクビレの場合このヒレの大きさを見れば雄か雌かが一発でわかるという事です。
また、このヒレは主に求愛行動に使われるそうですが、ヒレを全開にしたトクビレの姿はまるでクジャクのような美しさで本当に見入ってしまいます。因みにオスしか入っていない水槽でも時折ヒレを全開にする行動が見られるそうです。
これらの特徴を持つトクビレは、江戸時代の書記『西蝦夷日誌』(著:松浦武四郎)で異魚として絵付きで紹介されていますが、実際に昔から食べられていたのか…という部分は非常に気になるところでもあります。【西蝦夷日誌 第2編 19ページ】
さてさて、そんな見た目のトクビレですが、実は高級魚として扱われることが多く、その澄んだ白身には旨味やほんのり甘い脂が乗っています。刺身や干物、汁物などなど何にしても本当に美味しいのですが…中でも代表的な料理は、鱗が付いたまま背中を開き、身に味噌をぬって焼く『八角の軍艦焼き』です。
トクビレは時期になると宇都宮市場でも普通に見かける魚です。もしも県内の料理店で『八角』の名前を見つけた際は美味しい魚だ!…と思って是非注文してみてくださいね。