きぶなくんの市場のお魚雑学ブログ(魚以外もあるよ!)
甘エビのお話
2022-10-14
あなたはなぜそんなに甘いのか・・・
甘エビといえば、知らない人はいないのではないか…と思えるほどに有名な寿司ネタですね。でも実は、この甘エビという名前はあくまでも地方名兼流通名で本当の名前を『ホッコクアカエビ』といいます。
ホッコクアカエビは水深150~1380mの砂泥底、どろ底などに生息している深海生物です。そして主な産地は北海道から新潟、北陸3県など日本海側に集中しています。
さて、このホッコクアカエビですがイセエビやクルマエビなどの他のエビと比べても甘い味が段違いですね。なぜエビの仲間でもそんなに味が違うのでしょうか。その答えはホッコクアカエビ自身が体内に持つ消化酵素が関係しています。
私たち動物は食べたものを消化吸収するため、胃や膵臓などから消化酵素を含んだ消化液が分泌されます。ホッコクアカエビも当然エサを消化吸収するための消化酵素を持ちますが、実はこの酵素が特別なのです。
彼らが暮らす深海は水温が0~5℃と非常に低く、冷たい環境では酵素の働きは弱くなってしまいます。その為ホッコクアカエビは体内に低温下でも高活性に働く特別な消化酵素を持っているのです。
では、この消化酵素が甘いのか…というと、実はそうではありません。
これらの消化酵素はホッコクアカエビが水揚げされ、死んでしまったときに自己分解酵素として活性し始めます。その結果、エビ自身の持つ酵素がなんと自分の身の消化を始めてしまうのです。これを「自己消化」といいます。
しかし、この作用のおかげでタンパク質がアミノ酸へと分解され、甘い味の正体でもある旨味成分(グリシン・アラニンなど)が増えるというわけです。
つまり…
『甘エビは死んでから甘くなる!』…という事なのです。
しかし、そのような強い消化酵素を持つということは、逆にそれだけ鮮度の落ちが速いという事でもあります。その為、甘エビの出荷はスピードが命です。水揚げされた甘エビは船上にて冷海水を使った活〆めが行われ、選別を終えたのち即時冷凍、出荷されます。このように徹底された鮮度管理のもとに全国に流通しているのです。
逆に生きている甘エビは甘くない…という話も聞きますが、私は活甘エビを食べたことがないのでどのような味なのかは非常に気になるところです。
もしもこれから宇都宮市場で活甘エビを見かけることがあれば、甘くない甘エビがどのような味なのか、実際に確かめてみたいと思っています。